世界の金融システムを再構築する機会が得られるならば、社会のすべての人のニーズを適切に満たすモデルを設計することができるでしょうか。分散型金融(DeFi)分野の成熟が進むにつれて、その答えは着実に「Yes」に近づいているように思えてきます。
現在、世界の金融システムのほぼすべての部分が、中央集権的な機関によって管理されています。つまり、ルールを規定するのは政府機関であり、資本の流れを管理するのは大手銀行や金融機関、そして、住宅ローンや学生ローンなどから株式・債券投資に至るまで個人がサービスを利用するための唯一の手段を提供しているのは仲介業者です。
現在の金融システムは、多くの長所があるにもかかわらず、不十分は部分が露呈しています。たとえば、高い仲介コストや時間のかかる取引など、長年にわたり課題となっています。世界の平均送金コストは6.51%(2020年第4四半期現在)にのぼり、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)の10で設定された目標値3%の倍以上です。さらに銀行は平均で10.73%の手数料を徴収しています。
信頼をめぐる問題もあります。リーマンショックによって引き起こされた金融危機の発生後、金融サービスは世界で2番目に信頼度の低い業界となり、これを下回るのはソーシャルメディア部門のみとなりました。実際、2021年に行われた調査では、回答者の47%が大手銀行よりビットコインを信頼していると答えており、3年前に調査が実施されたときよりも大幅にその割合が高まっています。
「分散型金融の主なメリットの1つは、一元的な権限が必要ないことです」と世界最大級の暗号資産取引所であるBybitのCEO兼共同創業者、ベン・ジョウ氏は語っています。「DeFi市場に積極的に参加し、適切な量の担保を持っている限り、他のすべての人と対等な競争の場にいられます。たとえば、個人レベルでは信用スコアは存在しません。企業レベルでは、一定期間口座を持っていたり、一定のキャッシュフローを確保したりする必要がありません。従来の金融システムが引き続き大きな役割を果たす一方で、分散化へのシフトにより、新たな可能性と成長機会がもたらされることでしょう」。

分散型金融が推進する未来の事例
DeFiは、パブリックの分散型ブロックチェーン上に書かれたソフトウェアプロトコルにより、買い手、売り手、貸し手、借り手のピアツーピアのやりとりを可能にするシステムです。銀行や清算機関などの仲介業者を排除し、誰もが利用できるようにすることで、金融サービスへのアクセスを民主化しています。仲介業者が存在する代わりに、契約条件が満たされると自動的に実行されるスマートコントラクトにより、取引が可能になっています。DeFiの世界で主導権を握っているのは若い世代です。「ミレニアル世代やそれ以下の世代の間で行動パターンが変化しています」と、Bybitのコミュニケーション責任者であるイグネウス・テレナス氏は述べています。「彼らの多くはデジタルネイティブです。新しい技術をはるかに気楽に受け入れ、慣れ親しんでいます。DeFiがより包括的であることを理解しているのです。また場合によっては、DeFiのプロトコルとコーディング言語は、従来の金融システムよりも感覚的に受け入れやすいものなのです」。
DeFiの応用範囲は大きく拡大しています。借入や貸付など従来の金融取引に加えて、現在DeFiは複数の革新的な方法で利用されています。たとえば、投資家が資産のコントロールを維持できる分散型の自己管理取引所、取引所とは独立して動作するデジタル暗号ウォレット、スマートコントラクトを対象とした保険ソリューション、その他の資産(株式、債券、貴金属、デリバティブなど)の特性を模倣した取引可能な合成資産などです。
DeFiは2020年にブームになりました。昨年初めには、DeFi資産に設定された暗号資産は10億ドル未満でした。これが12月までに130億ドルに達し、現在800億ドルを超えています。それでも、成長の余地はまだまだあります。現在、暗号資産の総市場価値は2兆ドルを上回り、DeFiセクターは暗号資産市場の約4%を占めています。暗号資産の再分配は、次の段階の成長を促す可能性があります。
「DeFi業界は短期間で大きく成長しました」とテレナス氏は指摘しています。「今や、DeFiプロトコル間でプールされる合計資産額は、世界の一部の大手銀行や大手企業よりも大きな価値を持ちます。対応可能な巨大な市場の存在を踏まえると、今後数年で爆発的な成長の余地が大いにあります」。
DeFi市場に参加していない人々に、大きな成長の機会があります。銀行口座を持たない人々に注目してみましょう。世界中で推定17億人の成人が銀行口座を持っていません。一般的な障壁として、金融サービスのコストが高いことや、金融機関への信頼がないことなどがあります。その結果、融資、投資サービス、送金システムなどを利用しにくい状況にあります。銀行口座を持たない人口の3分の2が携帯電話を所有しており、これは金融サービスへのアクセスに役立つ可能性があります。ここで、DeFiベースのソリューションが、実際に最も効果的な方法となるかもしれません。

分散化をBybitの中心に
Bybitは分散化を非常に重視しています。Bybitの発展に伴い、透明性を高め、DeFiコミュニティの精神に忠実に従った取引所に再編したいとジョウ氏は強く考えるようになりました。
「デリバティブ取引所が取りうるルートは2つあります」と同氏は語っています。「1つは、レガシーシステムを念頭に置いて作成された規制要件に、後から適合させるやり方です。もう1つは、暗号化ネイティブのソリューションを使用して同様の成果を実現する分散型モデルです。私たちの目標は規制当局と一致しています。ただ、暗号化には暗号化ネイティブのアプローチの方がより適切だと考えています。最終的に、Bybitは分散型の道を選び、より分散化した形態で集中型の製品を提供することになるでしょう」。
Bybitは、将来的には独立して運営できる分散型取引所を創設したいと考えています。このような分散型取引所では、投資家はトークンを集中型ウォレットに預ける必要がなくなります。単純に、Bybitのチェーンマッチングサービスを利用して取引できるのです。そのような例はすでに存在しています。暗号資産の交換に使用される分散型金融プロトコル、Uniswapです。スマートコントラクトを使用し、Ethereumブロックチェーン上の自動トランザクションを円滑化しています。BybitもUniswapの成功を参考にする意向です。
取引所の分散化は、最終的な目的地ではないかもしれません。Bybitは、まずは分散型事業を集中型のBybitプラットフォームのキャッシュフロー支援により発展させ、最終的にそれらをスピンオフすることを通じて、分散化の精神を運営方法の中心に据えようと考えています。
「現在私たちは中央集権型の取引所ではありますが、分散型こそが目指している方向であり、これは私たちが世界にもたらしたいと願う変化なのです。なぜなら、これにより金融システム全体がより包括的になるのですから」とジョウ氏は語っています。「これは、すべてのボートが波に乗ることができる上げ潮のようなものです。すべての人に利益をもたらすものとなるでしょう」。