日本はロボット分野で世界をリードしており、現代の製造業においてバリューチェーンを形成する自動車の製造では世界第2位の地位にあります。先端技術を使用した日本製の乗用車やトラックの組立工場では、ハイテク化がますます進んでいます。
そのため、世界の情報技術(IT)業界のトップ企業を対象とした新たな調査が示すように、日本が第5世代(5G)移動通信システムに多大な野心を抱いていることは当然といえます。
エリクソンによるこの最近の調査はブルームバーグ・メディアスタジオによって実施され、日本、ドイツ、インド、およびアラブ首長国連邦の製造、運輸、 エネルギー、輸送の4セクターにおける400人のIT関連意思決定者を対象にアンケートが行われました。アンケートは、ITコミュニティーのセルラー接続性に対する意見の収集を目的とし、特に、セルラー接続性がより多くのアプリケーションを稼働させ、アジリティーを向上させることで、産業界に変革をもたらす可能性に焦点が当てられました。
日本の回答者は、自社事業において5Gへの依存が高まる点について、全アンケート対象者の中でも前向きな姿勢を示しています。回答者の70%が、セルラー通信に関する接続性の大型プロジェクトを今後6カ月以内に公開する予定と答えており、これは77%のドイツに次いで2番目に高く、51%のアラブ首長国連邦よりも19ポイントも高くなっています。
オートメーションが大きく進んでいる日本が持つ各種専門分野に、政府主導での5G対象地域拡大の取り組みが組み合わさることで、接続性イノベーションが花開くための理想的環境が生み出される、とエリクソンのエンタープライズ・ワイヤレス・ソリューションズ事業ヘッドのジョージ・ムルハーン氏は述べています。
製造業トップ企業とセルラー通信のイノベーションは密接に関連
エリクソンでムルハーン氏が率いる部門は、企業顧客がエリクソンのセルラー技術を最大活用できるよう支援しています。そのためにムルハーン氏は、新技術でモビリティーが向上するのに伴い、企業が業務をどのように再構成しているかについて常に最新動向を入手しています。
日本の自動車製造工場の多くが、従来の組み立てラインを、自律的に動く回転式組み立てパレットに置き換える業界全体のトレンドに従っており、そこでは車体がステーションからステーションへと移動し、部品が取り付けられています。
このようなパレットの導入や、部品を取り付け位置に導き、自動車の安全テストを行うロボットアームの採用に伴い、大量生産工場の高精度な稼働を実現するために1つのネットワークに接続させる必要のあるデバイス数は増大します。
「ロボット業界で支配的な地位を築くには、遅延時間を最少化、もしくは完全に排除できるあらゆるツールを利用する姿勢が必要です。日本がたどっているロードマップは、オートメーションがもたらす可能性の一段の拡大を目指すどんな人にとっても良い参考となるでしょう。」
反復的作業はロボットに任され、人間の作業員の役割は、スマートタブレットを使った作業の監視・管理など、より監督的なものにシフトしています。このような製造エコシステムを運用するため、専用5Gネットワークを選択する製造会社が増えています。こうしたオンプレミスネットワークは、オペレーションで許可されたデバイスのみがアクセスできるもので、遅延時間が短い5G通信を、企業がローカルエリアネットワーク(LAN)に求めるセキュリティの高さとともに提供しています。
オートメーションが加速するにつれて、これらのメリットはさらに重要になるとムルハーン氏は指摘しています。5Gの高スピード性を活用すれば、製造会社は設備のパフォーマンスをリアルタイムで把握し、作業中断につながるような問題の兆候をいち早く見つけることができるからです。
「自動車生産で優位に立っている日本は、サプライチェーン関連の問題をどの国よりも切実に感じています」とムルハーン氏は述べています。
同氏によると、半導体チップが在庫切れになった場合、工場全体の稼働停止が余儀なくされます。このような遅延に影響されやすいメーカーにとっては、ロボット設備のメンテナンスでさらに遅れを出すことは避けたいものです。そのため、メーカー各社はリアルタイムの予知保全にセルラー通信を活用し、このような問題に先手を打っています。このタイムリーなニーズにより、全国的な接続性の向上が、ますます緊急かつ優先すべき事項となっています。
接続性が作業員の安全性を向上
国際ロボット連盟によると、日本は世界のロボット供給量の45%を占めています。オートメーションの価値提案(バリュープロポジション)が深く浸透している日本では、オートメーションがもたらす高い効率性だけでなく安全性向上の可能性も高く評価されているとムルハーン氏は述べています。危険な作業を可能な限り機械に肩代わりさせることによって、企業は作業員の安全性を高めることができるのです。
「作業員の安全を守り理想的な作業環境を作ることは、成功と成長に不可欠です」とムルハーン氏は述べています。「このような価値観がこれほど高い割合で受け入れられているのは心強いことです。」
日本で新しいセルラー接続の運用が本格化すれば、5Gの有用性に対する理解が深まり、5Gは事業を大きく後押しすると同時に、業務効率と作業員の安全性を向上させる手段でもあると認識されるようになる、とムルハーン氏は予測しています。世界中が日本に注目しており、その影響力が世界中に波及効果を引き起こし続けています。