モバイルインターネットは私たちの生活に革新をもたらしました。人々のつながりを妨げていた障害が取り除かれ、経済的機会が生み出され、一人一人異なる無数の体験を実現できる可能性が開かれています。現在、コンピューターテクノロジーの新しい波によって、この革新がメタバースへと広がり、物理的世界とバーチャル(仮想の)世界がつながることで新しい機会が生み出されると期待されています。
メタバースで人々がつながることにより生み出される経済的価値を理解するには、モバイルインターネットが市場の競争にどれほどの公平性をもたらしたかを思い返してみるだけで十分でしょう。オンラインストアのオープンから、世界中の顧客に向けたメッセージの発信に至るまで、モバイルインターネットは、ビジネスを物理的な実店舗を超えて拡大させました。
早くからモバイルインターネットに取り組んだ企業がその恩恵を享受し、後れをとった企業は追い付くために時間を掛ける必要があります。デスクトップからモバイルへの移行が私たちの生活のあらゆる側面を変えたように、モバイルからメタバースへの移行もまた、あらゆる業界のあり方を変えるでしょう。
メタバースの導入は、2031年までに世界の国内総生産(GDP)を3兆ドル押し上げる可能性があり、このうちアジア太平洋は米国のおよそ2倍、他のどの地域よりもはるかに多くの金額を占めることになるとみられています 1。
Metaのアジア太平洋地域 グローバルビジネスグループ バイスプレジデントのカレン・テオ氏は次のように述べています。「メタバースはインターネットの歴史に新たなページを刻みます。従来のルールに捉われることなく、人々の体験や交流に新しい可能性をもたらします。メタバースはやがて、ブランドや人々が交流する方法を再定義することになるでしょう。」
これまでインターネットをただ眺めていた私たちは、メタバースによってインターネット空間に入りこみ、1人もしくは複数のアバターとしてバーチャル世界を体験できるようになります。居住可能なインターネットとも言えるもので、そこでは物理的世界においては不可能な体験を人々と共有できるのです。またそこには、特に当初から参加する企業にとって巨大な可能性が秘められており、Metaはこれらの企業によるメタバース参入を容易にするツールやソリューションを取りそろえています。
メタバースは今後、インターネット上で人々が交流する方法の中心となり、その分野はゲーム、エクササイズ、エンターテインメントからショッピング、さらには不動産から生産性にまで及ぶでしょう。何よりも重要なのは、メタバースが人々が交流する方法を再定義することになる点です。
人々は、多くのデバイスからメタバースにアクセスできるようになり、そこではさまざまな定義のレベルが用いられるでしょう。例えば、現時点の体験もあれば、未来の体験もあるでしょう。現在、メタバースの発展段階はいわば「ダイヤルアップインターネット接続」にあると言えますが、企業はメタバースの航海に乗り出す時機を待つ必要はありません。現在利用可能な技術を使って、今すぐに出発することができます。
例えば現在、世界で毎月7億人を超える人々が、Metaのテクノロジーを用い拡張現実(AR)フィルターを使用しています2。スコッチウイスキーブランドのザ・マッカランが台湾でまさにそれを実施しました。もうすぐ200周年を迎える同ブランドは、若い世代の消費者とつながるため、物理的世界とバーチャル世界を融合させました。
ザ・マッカランの歴史を物語として紹介する「ザ・マッカラン物語」と題されたイベントが、キャンペーンのメイン会場からライブ配信されました。台北で行われるイベントに実際に足を運べる人の数は限られていたため、ザ・マッカランはこれを、イノベーションを通じて台湾にいるすべての人にこの体験してもらう良いチャンスとみたのです。
Metaのクリエイティブショップチーム、ゼニス台湾(メディアエージェンシー)、そしてBBDO台湾(クリエイティブエージェンシー)の協力の下、ザ・マッカランは「ザ・マッカラン物語」をバーチャル領域に誕生させました。XRテクノロジーを活用し、同社はオンラインのオーディエンス向けに、エキシビション会場を360°探索できる実体感のあるインタラクティブな体験を生み出し、その長い歴史を新しい方法で伝えました。
ザ・マッカランが創出した体験は、メタバースを定義する特質の一つ、「共存(コ・プレゼンス)」の好例と言えます。選択した体験に没入する中で、私たちはたとえ離れ離れであっても一緒にいるように感じる機会を得ることができます。テクノロジーによって、私たちは物理的な障害を克服し、バーチャルの世界で、まるで本当にそこにいるかのように感じる形でつながれるようになるのです。「ウイスキー業界のパイオニアとして、私たちはオンラインとオフラインの両方で比類のないブランド体験を創出する、革新的なストーリーテリングの方法を追求しています。Metaの最新ソリューションを活用して、記憶に残る体験を生み出し、ザ・マッカランのブランド選好を高められることをうれしく思います。」
ザ・マッカランにとって、メタバースで消費者とつながることのメリットは明白です。「ザ・マッカラン物語」のオンラインイベントにより、広告想起リフトは7.1ポイント、ブランド認知リフトは5.4ポイントそれぞれ上昇し、いずれも業界平均をはるかに上回りました。このコンテンツ体験と体験創造の新しい方法が、人々の交流とビジネスチャンスのための最も豊かでクリエイティブな空間をもたらすでしょう。
例えばアジア太平洋地域では、ソーシャルメディア上でショッピングする買い物客の3分の2以上が、自宅からバーチャルで快適に商品を試したいと回答しています3。各企業には、こうしたニーズにより適した方法で、消費者とつながる新たな機会がもたらされています。
メタバースが提供するのは、ユーザーのうちアッパーファネル(認知・関心の低い層)とのつながりを生み出す手段にとどまりません。例えば、ヒョンデ・オーストラリアは、ミッドファネル(購入検討層)からローワーファネル(顕在層)を対象とするキャンペーンを展開しました。同社は試乗体験を丸ごと道路上から手のひらの中へと移動させ、ヒョンデ「Nレンジ」モデルを運転するという、エキサイティングで多感覚的な体験をARで再現しました。各モデルのユニークなサウンドとデザイン言語を中心に構築された、インタラクティブな視聴覚体験です。この体験の中で、ユーザーは次のステップへシームレスに移行する選択肢が提供されました。つまり、価格の確認と試乗の予約です。
ヒョンデ・モーター・カンパニー・オーストラリアのリテール・ブランド・プロダクト・マーケティング・ヘッドであるアレックス・ピンスティ氏は次のように述べています。「ヒョンデNレンジは、楽しい感覚を基礎に生み出されたモデルです。曲がりくねった急な坂を攻める時でも、単なる日々の通勤時でも、Nがもたらす運転を楽しむ感覚は唯一無二のものです。今回のARキャンペーンは、Nをデジタルで運転するという直感的な体験を、手軽かつ魅力的な方法で実現することで、ヒョンデブランドの遊び心とパフォーマンス志向の面を示すまたとない機会となりました。」
このキャンペーンは、ローワーファネルのユーザーの間で購入検討を獲得すると同時に、購入意思に先立つカスタマーサクセス評価の向上ももたらしました。広告想起リフトは12.5ポイント、ブランド認知リフトは8.4ポイントといった成果がみられました。
メタバースが日常生活の一部となる中で、企業は短期的および長期的な戦略を構築しなければなりません。今日にでもメタバースについての学習を始め、戦略の基礎を構築することができます。企業の成功にとって、「共創(コ・クリエーション)」と「継続性」を理解することが極めて重要です。
共創とは、プラットフォームや会社が仲介することで成り立つ世界から、ユーザーによって創造され所有される、公平でインクルーシブな世界への転換を示すものです。人々は注目され、話を聞いてもらい、評価されたいと望んでいます。企業はユーザーと交流、連携しながら、彼らが最も価値を置くものが反映された多様でインクルーシブな未来の創造に努めなければなりません。クリエイターたちはすでにメタバースにおける創造性の面をリードしており、企業が彼らと共に創造を行うことの必要性とチャンスが浮き彫りとなっています。
企業はユーザーとのあらゆるタッチポイントで包括的かつ統合されたソリューションを構築し、新たなソリューションと従来メディアを融合させてシームレスな体験を創造しなければなりません。そこには、プラットフォーム上で活動するコミュニティーとともに共創してくる人たちを採用し、その力を活用するチャンスがあります。
その準備として、企業は近いうちにARや仮想現実(VR)などのまだ新しいテクノロジーを試し、クリエイターと連携して新たなフォーマットを追求し、創造する必要があるでしょう。モバイルインターネットの場合と同様に、早い段階でイノベーションを採用すればその分恩恵が得られます。長期的には、企業は実体感のあるブランド体験を大規模に構築し、その目的と価値観を反映したバーチャルな世界を創造する必要があります。
テオ氏は次のように述べています。「私たちには、当初から多様性と公平性を持ち、インクルーシブなメタバースの構築を支援するチャンスがあります。これは非常に大きな責任です。しかし、Metaにおいて私が最もやりがいを感じるのは、コラボレーションを通じた事業展開と、テクノロジーで社会にプラスのインパクトを与えるという役割です。
ライフスタイル研究家、エンターテイナー、コメディアン、アーティスト、各分野の専門家など、クリエイターの姿はさまざまです。彼らはその独立性、人間性、そしてコミュニティーへの関与をもって結びついています。今日、企業、クリエイター、そして開発者はMetaのアプリ上で仮想・拡張現実機能を実験しており、それら機能のすべてがメタバースで大きな役割を果たすことになるでしょう。
テオ氏は次のように述べています。「ARやVRを試し、オーディエンスとつながる新しい方法を見つけることで、今ある機会に注力し続ける事が重要です。今そうしているのなら、すでにこの冒険に乗り出していることになります。メタバースへの準備は、デジタルトランスフォーメーションのストーリーの次のステップにすぎません。利用可能なクリエーティブツールに習熟し、それらを最大限に活用できるようにしておくことが次のトレンドへの備えとなります。その多くには、すでにMetaのプラットフォーム上でアクセスできます。」
メタバース上でのクリエイションに利用できるツールは、事実上どんな夢でも実現できます。複雑なゲームの世界から空想の月面世界まで、可能性は無限です。そのことを念頭に、企業は3つの問いを自らに問わなければならないでしょう。つまり、どんな価値を提供できるのか、人々にどんな風に感じてもらいたいのか、そして、メタバースでそれに対しどのように異なる形でアプローチすべきなのかという問いです。これらの問いへの答えが、可能性に満ちたバーチャル世界への扉の鍵を握っています。