「大きくなったら何になりたい?」と聞かれて、もしあなたが「ゲーマー」と答えたとしても、今ではさほど珍しいことではありません。専門職に就く若者が金融と医療分野でのキャリアを捨てて次世代の大規模テクノロジー・プラットフォーム、メタバースで一攫千金のチャンスを追求する事例が世界的に増えています。
「ウェブ 3.0」の特徴を生かして構築されたメタバースは、インターネットとソーシャルネットワークの次世代における進化といえます。メタバースでは、オンラインゲーム、ソーシャルネットワーキング、ユーザー生成コンテンツ、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)などのメガトレンドが融合した共有仮想空間が作り出されます。共有空間はやがて拡大し、ライブイベントが行われたり、遠隔教育や会議の場になったりするでしょう。しかも、分散型で実現されます。
「メタバースで実現が可能なのは、人々に能力を取り戻し、データを真に保有できるようにすることです」と、Bybitの共同創業者兼CEOベン・ジョウ氏は語っています。
「すなわち、インターネットの可能性を実現すること、つまり、活動の場を平らにならし、デジタル世界と仮想世界が草の根レベルから構築され、一握りの巨大企業に左右されることがないようにすることです。」
草の根のプレーヤーたちがメタバースを形成しつつある一方で、企業も排除されまいと躍起になっています。Bloomberg Intelligenceの分析によると、2021年第4四半期の決算発表やカンファレンスでメタバースについて言及された回数は、前年同期のほぼゼロから約150回に急増しました。その理由は明らかです。メタバースの収益機会は、2020年の4780億ドルから、2024年には7830億ドルに達する可能性があるからです。
Bloomberg Intelligenceによれば、メタバースによる収益機会の半分以上は、主要市場としてのオンラインゲーム会社とゲームハードウエア会社が、残りはライブエンターテインメント会社とソーシャルメディア会社が占めています。大企業がチャンスを見出そうと画策する一方で、小規模で分散型のゲームプラットフォームはすでに人々の生活を変えつつあります。
人生を変えるきっかけとしての暗号資産
新型コロナウイルスのパンデミックにより、世界中で何百万人もの人々が職を失いました。生計を立てるために、一部の人々はアクシー・インフィニティのようなオンラインゲームに目を向けました。アクシー・インフィニティは、プレーヤーが法定通貨と交換できる「スムース・ラブ・ポーション」(SLP)と呼ばれるデジタルトークンを集めるゲームです。
Bybitの広報部門責任者であるイグネウス・テレヌス氏は以下のように語っています。「コロナ禍以前、フィリピンは観光に大きく依存していましたが、パンデミックが起こると観光客は激減し、人々は職を失いました。そこで、収入を補うためにこのゲームを始めたのです。今では、彼らの多くが他の方法で得るよりも多くのお金を稼いでおり、遊んで稼ぐというこのモデルに完全に移行しました。」
アクシー・インフィニティのデイリーアクティブユーザー数(DAU)は、2021年4月の3万人から8月には180万人を超え、1日の売上高は3300万ドルに達しました[1]。プレーヤーの大半は、フィリピンやブラジル、ベネズエラなど、パンデミックで甚大な被害を受けた発展途上国の居住者ですが、先進国の居住者も多く含まれています。このことからも、専門職に就く若者が従来型のキャリア路線から離れ、メタバースで生計を立てようとしているという現象が浮き彫りになりました[2]。
テレヌス氏はこう続けます。「ブロックチェーンゲームの人気は非常に高まってきています。理由の一つは、プレーヤーが実際に物を保有できるからです。長年にわたり人々はゲームを楽しんできたものの、最近まではゲーム内の資産を実際に保有することはできませんでした。しかし今では、ブロックチェーンを活用して実際に保有できるようになりました。しかもその資産には価値があります。」
多くの場合、価値は仮想通貨として形成されます。仮想オブジェクトや無形のアイテムはすべて非代替トークン(NFT)とされ、メタバースで使用される唯一の通貨となります[3]。ゲーム内での仮想通貨の価値が高まるにつれて、ゲームは、副業としての役割から、生計を立てる手段に進化してきています。
「アクシー・インフィニティでは、ゲーム内で人々ができることを増やすことで、驚異的な成功が可能であることを実証しました。そうすることで、人々はオンラインゲーム体験に実際に貢献し参加するようになりました。今後も人々は、ゲーム内の世界を具体化することに積極的に関わっていくことになるでしょう」とテレヌス氏は述べています。
メタバースでの新たな機会の解放
メタバース関連のゲームを愛好する人々もいれば、ゲーム内の仮想通貨に投資する人々もいます。投資家たちはBybitのような取引所を利用して、SLP、ディセントラランドのMANA、ザ・サンドボックスのSANDなどの仮想通貨を取引しています。
Bybitの共同創業者兼CEOベン・ジョウ氏は以下のように述べています。「Bybitは取引を促進することで、人々がより広い仮想通貨空間においてトレンドに基づいてお金を得られるようにすることを目指しています。今後、ビルダー、エクスプローラー、ストーリーテラー、そしてクリエイターがメタバースに次々に現れてくるでしょう。また、メタバースのビルダーにより生成されたトークンを増やし利益を得たいだけの人も出てくるでしょうが、それもあり得る話だと考えています。この空間に人々を引き込むための素晴らしい方法の1つといえるでしょう。」
さらにBybitは、ゲームを通じて人々をこの空間に呼び込もうとしています。11月には、世界で最も急速に成長している分散型自立組織(DAO)の一つであるBitDAO、複数の大手ゲーム会社、そして仮想通貨関連企業とともに5億ドル規模の共同プロジェクト「Game7」の提案に合意し、助成金、教育、戦略的イニシアチブを通じたブロックチェーンゲーム業界の加速化を目指します[4]。BybitはBitDAOの最初の提案者であり、先物取引高の2.5bps相当の資金を同組織に拠出しています。
テレヌス氏は、「私たちはメタバースこそが未来であると信じており、それにどう貢献できるかを考えています。ユーザーに力を与え、可能性、価値、保有、帰属意識と存在意義をユーザーに取り戻す形で実現します。人々は保有意識を持てば積極的に参加するだろうと心から確信しています。これは、私たちが取り組んでいる方法の一つです。」と述べました。
機会の規模や、人々の生活にさまざまな形で根付いてきていることを踏まえ、テレヌス氏はメタバースが今後も成長していくと確信しています。
「メタバースは人々の想像力の中に根付いてきました。アクシー・インフィニティやGame7のような成功例が増えるにつれて、メタバースに注がれるリソースという面だけでなく、この空間に参加する人数という面でも加速と拡大がみられるでしょう。今からとても楽しみです。」